カーテンを閉め切った薄暗い部屋。安っぽい調度品と生活感の
無さから、おそらく何処かの安宿だろうと知れる。
ぎし・・・
軋む音がした。
その部屋の隅に位置する寝台に人影があった。ゆっくりと立ち上
がると部屋を横切って窓際まで行き、止まる。シルエットからその
人影が男だとわかる。カーテンを開けるでもなく、男は目を瞑ったま
ま動かない。
・・・近づいてくる。
この感じは同族だ。上手く隠してはいるようだが俺にはわかる。
「クククッ・・・楽しみな事だ」
戦いの予感に沸き上がる愉悦。その時は近い。だが今は・・・
コンコン。
薄いドアにノックの音が響く。掃除婦らしいその女は返事が無いと
みると、鍵をあけてドアノブを回した。
突然冷たい風が女の顔に吹き付ける。
…誰も居ない。
開いた窓から吹き込んでくる風が、荒々しくカーテンをはためかせて