寂れた街並みを白く霞ませて雨が降っている。
11月半ば。もう冬も近く、早くも辺りは暗闇に覆われようとしている。
その11月の冷たい雨も、今の俺には心地よかった。目を細め、鉤爪
を紅く濡らす液体をべろりと舐めとる。口のなかにじわりと広がる鉄の
味。そして鼻腔を満たす何ともいえぬ芳香に、知らず口元はまるで笑
みを浮かべるかのような形に歪む。
俺の右腕に掲げられた肉の塊からその液体は流れ出している。ま
だ湯気を立てるほどに熱く、尽きる事の無いかのように大量に流れ出
し俺の体躯を紅く染め上げてゆく・・・血だ。
滴り落ちた血は雨に濡れた地面に広がる。その紅い水溜まりが辺
り一面を覆うほどになった時、俺は新たな獲物の気配を感じとってい
た。もはや冷たくなったその肉塊を無造作に足元へと投げ捨てると、
俺は新たな獲物のもとへ向かうべく雨のなかを跳躍した。その顔に
まごう事無き邪な笑みを浮かべて。
・
・
・
・
・