静寂が全てを支配する社の境内。

 孝、忠とそれぞれ台座に刻まれた一対の狛犬だけが佇んでいる。

 茂った木々にかこまれわずかにのぞく空はどんよりと曇り、そこか

ら差し込む薄ぼんやりとした明かりが辺りを鈍く照らしていた。

 時折一際強い風が吹くと、茂った枝々を揺らし騒めかせてゆく。

 …そして、また、訪れる静寂。

 左右に立ち並ぶ木々に注意を払いつつ、千鶴と楓は進む。すぐに

階段は終わり、開けた場所に出る。

 一歩、二歩…千鶴は慎重に歩を進める。だが三歩と歩かないうち

にその歩みを止め、静かに身構える。